
建設業許可を申請しようとすると、必要書類の多さに戸惑う方は少なくありません。必要書類は申請者の状況によって変わります。
- 個人事業主か法人か
- 決算を終えているか
- 経験を何で証明するか
大切なのは書類名を覚えることではなく、その書類が「何を証明するためのものか」を理解することです。
この記事では、宮城県知事許可(一般建設業許可)の新規申請を念頭に整理します。金額・期限・様式番号は改正されるため、実際の申請では宮城県「建設業許可の手引き」の最新版(執筆時点では令和8年3月改定版)と最新の法令を必ず確認してください。
必要書類は『申請書類』と『確認資料』に分けて考える
建設業許可の必要書類は、大きく「申請書類」と、許可要件を裏付ける「確認資料」に分けて考えると整理しやすくなります。宮城県の案内でも、申請書類と確認書類・確認資料を区別して取り扱っています。
- 申請書類/所定の様式に記入して作成する申請書一式と、定款の写し・登記事項証明書・納税証明書などの添付書類
- 確認資料/財産的基礎、適正な経営体制、実務経験、常勤性、保険加入状況、営業所所在地などを裏付ける資料。何が必要かは人によって変わります
建設業許可の申請では、多数の様式を作成するほか、許可要件を裏付ける確認資料も準備します。確認資料では、適正な経営体制(建設業法第7条第1号)、営業所技術者等の配置(同条第2号)、誠実性(同条第3号)、財産的基礎(同条第4号)、欠格要件(第8条)に該当しないことなどが確認されます。
要件の詳細は建設業許可の要件とは?5つの要件をわかりやすく解説で、許可が必要になる工事の判断は建設業許可が必要なケース・不要なケースとは?で整理しています。
新規申請で作成する主な様式
宮城県の新規申請では、主に次のような様式を作成します。
- 建設業許可申請書〔様式第1号〕と各種別紙
- 工事経歴書〔様式第2号〕、直前3年の工事施工金額〔様式第3号〕、使用人数〔様式第4号〕
- 常勤役員等や営業所技術者等に関する証明書〔様式第7号・第7号の2、第8号など〕
- 財務諸表〔法人:様式第15号~第17号の2(一定規模の株式会社は様式第17号の3も必要)、個人:様式第18号・第19号〕など
このほか、誓約書、健康保険等の加入状況、営業の沿革なども必要です。実際に作成する書類は、法人・個人の別や申請者の状況によって異なります。
個人事業主が準備する主な書類
- 所得税確定申告書の写し(経営経験や常勤性を証明する場合)
- 個人事業税の納税証明書(原本・納付すべき額及び納付済額の記載があるもの)
- 工事請負契約書・注文書・請求書・入金確認資料など(経営経験・実務経験を証明する場合)
- 預金残高証明書または融資可能証明書(資金調達能力で証明する場合)
- 営業所の写真
- 登記されていないことの証明書、身元(身分)証明書、必要に応じて許可申請者の住所、生年月日等に関する調書〔様式第12号〕
登記されていないことの証明書と身元(身分)証明書は、いずれも発行後3か月以内のものが必要です(外国籍の方は身元(身分)証明書は不要)。様式第12号は、常勤役員等として証明する場合など、作成が不要となることがあります。
新規開業で決算期が未到来の場合は、個人事業税の納税証明書に代えて、県税事務所の受付印のある事業開始等届出書または電子申請受付確認のハードコピー等を添付します。
この場合、個人用財務諸表〔様式第18号・第19号〕は添付不要です。
なお、営業所写真は宮城県手引きで新規申請時に外観・入口・内部の写真が求められています。
個人事業主本人の常勤性は、所得税確定申告書の表紙と第二表の写しで確認されます。経営経験を証明する場合は、経験期間分の確定申告書に加え、工事の営業実態を確認する資料が必要となる場合があります。
法人が準備する主な書類
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書・発行後3か月以内)
- 定款の写し
- 法人用財務諸表〔様式第15号~第17号の2(一定規模の株式会社は様式第17号の3も必要)〕
- 法人事業税の納税証明書(原本・納付すべき額及び納付済額の記載があるもの)
- 常勤性・財産的基礎・営業所の実態などを確認する資料
新規設立会社で決算期が未到来の場合は、法人事業税の納税証明書に代えて、県税事務所の受付印のある法人設立等届出書または電子申請受付確認のハードコピー等を添付します。
決算書は、そのまま提出すれば足りるわけではありません。法人では、通常の決算書をもとに、建設業許可用の財務諸表〔様式第15号~第17号の2(一定規模の株式会社は様式第17号の3も必要)〕を作成します。新規設立会社で決算期が未到来の場合は、開始貸借対照表を提出します。
自己資本500万円以上を財務諸表で確認できない場合などは、預金残高証明書または融資可能証明書を用意します。
法人は書類ごとに対象者が異なる
法人でつまずきやすいのが、欠格要件の確認書類です。「役員全員分」と一括りにできず、書類ごとに対象者が違います。
| 書類 | 対象者 | 期限 |
|---|---|---|
| 登記されていないことの証明書(法務局) | 取締役・監査役等+常勤役員等(経営業務の管理責任者)分も必要。取締役ではない相談役・顧問・議決権100分の5以上の株主・出資総額100分の5以上の出資者(いずれも個人)は不要 | 発行後3か月以内 |
| 身元(身分)証明書(本籍地の市区町村) | 同上。外国籍の方は不要 | 発行後3か月以内 |
| 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書〔様式第12号〕 | 監査役は不要。常勤役員等(経営業務の管理責任者)は作成不要。取締役のほか、相談役・顧問・議決権100分の5以上の株主・出資総額100分の5以上の出資者(いずれも個人)も作成が必要 | ― |
従たる営業所に令3条の使用人を置く場合は、その人についても様式第13号や「登記されていないことの証明書」「身元(身分)証明書」が必要です。
「身元(身分)証明書」は、運転免許証やマイナンバーカードのことではありません。住所地ではなく本籍地の市区町村で取得する証明書で、「登記されていないことの証明書」とは取得先も異なります。名称が紛らわしく、最も間違えやすい書類です。
期限のある書類は取得の順番が重要です。まず要件を確認し、申請日を決めてから逆算します。早く取得しすぎると、有効期限切れで取り直しになることがあります。履歴事項全部証明書は発行後3か月以内、預金残高証明書・融資可能証明書は申請受理前1か月以内です。
要件ごとに、何を証明するのか
適正な経営体制(常勤役員等)
建設業の経営を適切に行える体制があるかを確認されます(建設業法第7条第1号、基準は施行規則第7条第1号)。以前は「経営業務の管理責任者」と呼ばれた要件で、現在は常勤役員等の体制として確認されます。法人では常勤役員等(取締役等)が、個人事業主では本人または支配人が、建設業の経営に関する一定の経験を持つことが必要です。役員経験があれば自動的に満たすわけではなく、経験の内容・年数・立場によって証明方法が変わります。詳しくは建設業許可の経営業務管理責任者とは?該当する人・しない人をご覧ください。
営業所技術者等の配置
営業所ごとに、営業所技術者等を専任で置く必要があります(建設業法第7条第2号)。以前は「専任技術者」と呼ばれた要件です。資格または実務経験で証明します。詳しくは建設業許可の営業所技術者等(旧・専任技術者)とは?をご覧ください。
実務経験で証明する場合、確認資料は証明する期間に許可を受けていたかどうかで変わります。許可業者としての期間は、過去に提出した変更届出書(決算報告)の表紙と工事経歴書の写しなどで確認します。許可を受けていない期間は、工事請負契約書または注文書等の写しに加え、発注証明書・領収書または請求書と入金確認書の写しが必要です。
宮城県の手引きでは、工事請書のみの提出は認められず、注文者の押印のないものや担当者の押印のみの契約書・注文書等も不可とされています。押印のない資料しか手元にない場合の取扱いは、実務経験10年の証明で失敗しやすいポイントで解説しています。
資格がある場合でも、常勤性の確認資料は別途必要です。宮城県では新規申請の場合、営業所技術者等一覧表に記載した者全員について常勤性を確認します。営業所技術者等と常勤役員等の常勤性は、法人では標準報酬決定通知書を最優先とする所定の順序でいずれかの資料により、個人事業主では所得税確定申告書等により確認します。
財産的基礎(申請区分で確認方法が変わります)
請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用が確認されます(建設業法第7条第4号)。一般建設業許可では、宮城県の手引き上、次の方法で確認されます。
| 申請区分 | 確認方法 |
|---|---|
| 新規申請 |
次のいずれか ① 自己資本が500万円以上あること ② 500万円以上の資金調達能力があること |
| 更新申請 業種追加申請 |
次のいずれか ① 自己資本が500万円以上あること ② 500万円以上の資金調達能力があること ③ 直前5年間、宮城県知事許可を受けて継続して営業した実績があること |
ここは間違えやすい点です。新規申請では、③の「5年間の営業実績」は使えません。①は申請時に提出する財務諸表の貸借対照表(法人は様式第15号、個人は様式第18号)で、②は取引金融機関発行の500万円以上の預金残高証明書や融資可能証明書で確認します。
したがって、自己資本500万円以上を財務諸表で示せる場合、残高証明書は不要です。新規設立法人など自己資本が足りない場合に②で証明します。
社会保険への加入
適正な社会保険への加入も許可の基準です(建設業法施行規則第7条第2号)。健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、適用事業所に該当する営業所が届出を済ませていることが求められます。「健康保険等の加入状況〔様式第7号の3〕」を作成し、加入を確認できる資料を添付します。加入義務は、法人か個人か、常用労働者の数によって次のように変わります。
| 事業所区分 | 適用除外となる保険 |
|---|---|
| 法人(常用労働者1人以上) | なし |
| 法人(被保険者となる役員のみ) | 雇用保険のみ |
| 個人事業所(5人以上) | なし |
| 個人事業所(1~4人) | 健康保険・厚生年金 |
| 一人親方等 | 3保険とも |
役員だけの法人でも、報酬を受ける役員がいる場合は、原則として健康保険・厚生年金の加入対象です。ただし無報酬の役員しかいない場合など、個別の事情で適用関係が変わることがあるため、判断に迷う場合は年金事務所に確認してください。なお、提出する標準報酬決定通知書の写しなどは、被保険者等記号・番号の欄をマスキングします。
【宮城県】申請窓口・予約・提出部数・手数料
管轄の土木事務所に提出する
申請書類は、主たる営業所の所在地を所管する土木事務所に提出します(所在地・連絡先は最新の手引きで確認してください)。
| 主たる営業所の所在地 | 提出先 |
|---|---|
| 仙台市・塩竈市・名取市・多賀城市・岩沼市・富谷市・亘理郡・宮城郡・黒川郡 | 仙台土木事務所 総務班 |
| 白石市・角田市・刈田郡・柴田郡・伊具郡 | 大河原土木事務所 庶務担当 |
| 大崎市・栗原市・加美郡・遠田郡 | 北部土木事務所 庶務担当 |
| 石巻市・東松島市・登米市・牡鹿郡 | 東部土木事務所 総務班 |
| 気仙沼市・本吉郡 | 気仙沼土木事務所 総務班 |
許可申請に関する個別の相談も、主たる営業所を管轄する土木事務所が窓口です。なお、2つ以上の都道府県に営業所がある場合は国土交通大臣許可となり、宮城県内に主たる営業所がある場合の申請先は東北地方整備局です。これは営業所の所在地による区分で、工事ができる場所を限定するものではありません。この区分の考え方は宮城県知事許可と大臣許可の違い|他県の工事はできる?で解説しています。
予約制・提出部数・手数料
申請は予約制で、事前相談も予約の対象です。申込開始日は、仙台土木事務所と東部土木事務所が予約希望日の60日前から、大河原・北部・気仙沼の各土木事務所が31日前からです。先着順のため希望日に取れないこともあります。
書面で申請する場合、許可申請書は窓口に提出します(郵送不可)。提出部数は正本1通と写し2通(土木事務所提出分、申請者控え)で、確認資料は正本と申請者控えの計2通に添付します。
申請手数料は、新規・許可換え新規・般特新規が9万円です。納付は各合同庁舎等のセルフレジで行い、仙台土木事務所では窓口でのキャッシュレス決済も利用できます。宮城県収入証紙は令和8年3月31日で使用期限が終了しました。なお、手数料は不許可でも還付されません。
電子申請(JCIP)という選択肢
窓口への持参、提出部数、セルフレジでの納付は、書面で申請する場合の取扱いです。宮城県は建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)にも対応していますが、電子申請でも管轄土木事務所の要件審査は必要で、手数料はインターネットバンキングでの納付になります。手続の流れは宮城県の建設業許可は取得まで何日かかる?で解説しています。
【宮城県の特徴】営業所は写真で確認する
営業所は、単なる住所や連絡先ではなく、営業活動を行う場所としての実態が必要です。宮城県では営業所所在地の確認資料は写真とされており、添付書類一覧に建物の登記事項証明書や賃貸借契約書は挙げられていません。他県では契約書等を求められることがあるため、宮城県の特徴といえます。ただし、営業所所在地に疑義がある場合は、必要に応じて追加資料の確認を求められることがあります。
その代わり、写真が実質的な証明手段になります。事業管理課ホームページの写真台紙に、営業所名・使用権原(自己所有か賃貸借の別)・撮影年月日を明記します。写真台紙を使用しない場合は、これに撮影場所を加えて用紙に明記します。必要な写真は次のとおりです。
- 外観全景(看板等を確認できるもの)※入居者案内板等がある場合はその写真も添付
- 入口付近(表札等を確認できるもの)
- 内部前景(電話、机等の什器備品を確認できるもの)
- 建設業の許可票(標識の記載内容が判読可能なもの)※新規許可申請の場合は不要
新規申請では許可票の写真は不要ですが、それ以外の3点は必要です。自宅兼事務所の場合は、生活空間との区別も確認されます。自宅を営業所にする場合の考え方は宮城県で自宅兼事務所の建設業許可は取れる?で解説しています。
個人事業主から法人化する場合の注意点
個人事業主として取得した建設業許可は、法人化しても自動的には引き継がれません。誤解すると、許可のない期間が生じるおそれがあります。ただし、あらかじめ建設業法第17条の2に基づく認可を受ければ、法人成りの際に建設業者としての地位を承継できます。承継元が営んでいた建設業の全部を承継させることが要件で、一部の業種だけを承継させることはできません。宮城県では、遅くとも承継の事実発生日の35日前までに申請を完了するよう案内しています。認可を利用せず法人で新規申請する場合は、新規申請手数料9万円が必要です。
まとめ
宮城県の建設業許可では、経営経験・実務経験・財産的基礎・常勤性を何で証明するかを確認し、それに応じた資料を準備します。期限のある証明書もあるため、申請日を決めてから逆算して取得することが重要です。書類を揃えること自体が目的ではありません。許可要件を満たしていることを、書類で説明できる状態にすることが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 新規申請では、残高証明書は必ず必要ですか。
いいえ。自己資本500万円以上を財務諸表で確認できる場合は不要です。資金調達能力で証明する場合は、500万円以上の預金残高証明書または融資可能証明書を申請受理前1か月以内に取得します。
Q2. 開業・設立直後で納税証明書が取れない場合でも申請できますか。
はい。決算期未到来の場合、県税事務所の受付印のある届出書(個人事業主は事業開始等届出書、法人は法人設立等届出書)または電子申請受付確認のハードコピー等を、納税証明書に代えて添付します。
宮城県の建設業許可申請で必要書類に迷ったら
必要書類は、申請者の状況や許可要件の証明方法によって異なります。このような場合は、申請前に確認しておくことをおすすめします。
- 自分の場合に必要な書類が分からない
- 手元の契約書や注文書などが証明資料として使えるか判断できない
- 有効期限のある書類をいつ取得すればよいか分からない
建設業許可申請は、確認する順番を誤ると、書類の取り直しや申請方針の見直しが必要になることがあります。必要書類の整理から始めたい方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。
運営事務所:行政書士村上敦志事務所
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