
建設業許可を検討している方の中には、「一般建設業許可と特定建設業許可のどちらが必要なのか」で迷う方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、一般か特定かは、原則として、発注者から直接請け負った工事について、元請として締結する下請契約の請負代金の合計額で判断します。
その合計額が、建築一式工事以外の工事で5,000万円以上、建築一式工事で8,000万円以上になる場合は、特定建設業許可が必要です(建設業法第3条第1項第2号、建設業法施行令第2条)。
発注者から受け取る元請工事の請負代金額や工事全体の規模だけで、一般か特定かが決まるわけではありません。この記事では、判定の流れと、混同しやすい「500万円基準」との違いを解説します。
一般建設業許可と特定建設業許可は何が違うのか
一般建設業許可でも、元請・下請のどちらの立場でも工事を請け負うことができます。発注者から請け負う工事の金額が大きいという理由だけで、特定建設業許可が必要になるわけではありません。
特定建設業許可が必要になるのは、発注者から直接工事を請け負った元請業者が、その工事について基準額以上の下請契約を締結する場合です(建設業法第3条第1項第2号、第16条)。
したがって、下請として工事を受注する場合や、元請として受注しても工事のすべてを自社で施工する場合は、そのことだけを理由に特定建設業許可が必要になることはありません。ただし、軽微な建設工事を超える工事を請け負う場合は、対応する業種の建設業許可が必要です。
Q1 その工事は、発注者から直接請け負った(元請)工事ですか?
対応する業種の建設業許可は必要です。
Q2 その工事を施工するために、下請に出しますか?
対応する業種の建設業許可は必要です。
Q3 その工事について締結する下請契約の請負代金の総額はいくらですか?
下請契約の総額を、次の基準額と比較します。
| 工事の種類 | 一般建設業許可で対応可能 | 特定建設業許可が必要 |
|---|---|---|
| 建築一式工事 | 8,000万円未満 | 8,000万円以上 |
| 建築一式工事以外 | 5,000万円未満 | 5,000万円以上 |
主な根拠法令:建設業法第3条第1項第2号、第16条、建設業法施行令第2条
※軽微な建設工事については、建設業法第3条第1項ただし書、建設業法施行令第1条の2
※上記の金額は令和7年2月1日から適用されています(令和6年政令第366号)。同日前に締結した下請契約は、改正前の4,500万円(建築一式工事は7,000万円)で判断します。
※請負代金の額には、消費税及び地方消費税を含みます。
判定で間違えやすい4つのポイント
8,000万円基準は建築一式工事だけ
8,000万円が基準となるのは、建築一式工事だけです。土木一式工事や電気工事、管工事、内装仕上工事など、建築一式工事以外の工事には5,000万円の基準が適用されます(建設業法施行令第2条)。
建物に関する工事でも建築一式工事とは限らない
建築一式工事とは、建物に関する工事をすべて含むという意味ではありません。契約書の名称ではなく、実際の工事内容によって判断します。
総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事に当たらず、専門工事として施工する場合は、8,000万円ではなく5,000万円の基準が適用されます。判断に迷う場合は、契約を締結する前に許可行政庁へ確認する必要があります。
工事内容ごとの業種の考え方は、建設業許可の29業種とは?選び方と注意点で詳しく解説しています。
複数の下請契約は消費税込みで合算する
下請契約を複数の業者に分けても、1件の元請工事に関する契約であれば合算して判定します。
例えば、建築一式工事以外の工事について、3,000万円と2,500万円の下請契約を締結する場合、合計額は5,500万円です。契約を2社に分けていても、特定建設業許可が必要になります。
また、金額は消費税および地方消費税を含めて判断します。税抜金額が基準未満でも、税込金額が基準以上になる場合は注意が必要です。
許可区分は工事業種ごとに取得する
建設業許可は工事業種ごとに与えられるため、ある業種について一般建設業許可、別の業種について特定建設業許可を受けることができます。許可を受けているすべての業種を特定建設業へ切り替える必要はありません。
ただし、5,000万円・8,000万円の判定を、下請先の専門工事業種ごとに分けて行うわけではありません。発注者から直接請け負った1件の元請工事について、締結する下請契約の合計額で判定します。
例えば、建築一式工事を元請として請け負い、電気工事、管工事、内装仕上工事などの下請契約の合計額が8,000万円以上になる場合は、原則として特定建設業の建築工事業の許可が必要です。
500万円基準と特定建設業の基準は別の話
建設業許可で特に混同されやすいのが、「そもそも建設業許可が必要かどうか」と、「一般建設業許可か特定建設業許可か」という二つの判定です。
建設業許可が必要かどうかは、元請・下請を問わず、自社が請け負う1件の工事の請負代金額で判断します。一方、一般か特定かは、発注者から直接請け負った元請工事について、下請に出す契約金額の合計額で判断します。
建設業許可そのものの要否については、建設業許可が必要なケース・不要なケースとは?で詳しく解説しています。
| 比較項目 | 建設業許可が必要かどうか | 一般か特定か |
|---|---|---|
| 見る金額 | 自社が請け負う工事1件の請負代金額 (元請・下請を問わない) |
発注者から直接請け負った工事について、元請として締結する下請契約の合計額 |
| 基準額 (税込み) |
500万円未満は原則として許可不要 建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅(主要構造部が木造で、延べ面積の2分の1以上が居住用のもの) |
5,000万円以上は特定建設業許可が必要 建築一式工事は8,000万円以上 |
| 材料支給 | 注文者が提供する材料の市場価格や運送費を加えて判断する | 元請負人が下請負人に提供する材料等の価格は、下請代金の額に含めない |
※スマートフォンでは、表を左右にスクロールして確認できます。
特定建設業許可は一般建設業許可より要件が厳しい
特定建設業者は、多額の下請契約を伴う元請工事を担うことから、下請業者の保護を図るため、一般建設業より厳しい技術者要件と財産的基礎が求められます。多額の下請発注を伴う元請案件を予定している場合は、契約前に要件を満たせるか確認しておく必要があります。
営業所技術者等の要件
特定建設業許可では、営業所ごとに特定営業所技術者を専任で置く必要があります(建設業法第15条第2号)。その要件は、業種に対応した一級の国家資格等によって満たす方法のほか、指定建設業以外では、一般建設業の営業所技術者となる要件に加えて、指導監督的な実務経験によって満たす方法があります。
さらに、土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の7業種(指定建設業)については、実務経験だけでは要件を満たすことができません(建設業法第15条第2号ただし書、建設業法施行令第5条の2)。
財産的基礎の要件
財産的基礎の要件も、一般建設業許可とは水準が大きく異なります(建設業法第7条第4号、第15条第3号)。以下の具体的な金額基準は、建設業許可事務ガイドライン【第7条関係】4および【第15条関係】2に示されています。
| 区分 | 一般建設業 | 特定建設業 |
|---|---|---|
| 考え方 | 次のいずれかに該当すればよい | 次のすべてに該当する必要がある |
| 内容 |
①直前の決算において自己資本が500万円以上あること ②500万円以上の資金調達能力があること ③許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績があること |
①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと ②流動比率が75%以上であること ③資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること |
「いずれか」ではなく「すべて」を満たす必要がある点が、最大の違いです。直近の決算書をもとに、早めに確認しておくことをおすすめします。
監理技術者の配置が必要になる
特定建設業許可を受けた元請業者が、下請契約の総額が基準額以上になる工事を施工する場合は、その工事現場に主任技術者ではなく監理技術者を置かなければなりません(建設業法第26条第2項)。許可を取得できるかどうかだけでなく、実際の現場に必要な技術者を配置できるかも、あわせて確認しておく必要があります。
一般建設業から特定建設業へ変更する場合
一般建設業から特定建設業への移行は、変更届では行えません。あらためて特定建設業許可を申請する「般・特新規」の手続きが必要です。ただし、すでに別の業種について特定建設業許可を受けている場合は、申請区分が「業種追加」となることがあります。申請区分は現在の許可状況によって異なるため、許可行政庁の手引き等で事前に確認してください。
ここで最も重要なのは、特定建設業許可を受けていない状態で、基準額以上となる下請契約を締結すること自体が禁止されているという点です(建設業法第16条)。「工事が決まってから許可を取る」のでは間に合いません。申請書類の収集・作成や審査には一定の期間がかかるため、多額の下請発注を伴う元請工事を予定している場合は、早い段階で許可区分、許可業種、技術者要件、財産的基礎を確認しておく必要があります。
まとめ
一般と特定の判断基準
- 一般か特定かは、原則として、発注者から直接請け負った工事について、元請として締結する下請契約の請負代金の総額で判断します。発注者から受け取る元請工事の請負代金額そのものや、工事全体の規模だけで決まるわけではありません。
- その総額が、建築一式工事以外で5,000万円以上、建築一式工事で8,000万円以上になる場合は、特定建設業許可が必要です。金額は消費税を含めて判断し、複数の下請業者に分けて発注する場合は合計します。この基準は、建設業許可そのものの要否を判断する500万円基準とは別のものです(建設業許可が必要なケース・不要なケースとは?)。
- 一般から特定への切替えは、変更届ではなく許可申請(原則として「般・特新規」)が必要です。基準額以上となる下請契約を締結する前に、特定建設業許可を受けておかなければなりません。契約変更によって総額が基準額以上になる場合もあるため、判断に迷うときは許可行政庁または専門家に確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 一般建設業許可を持っていますが、同じ業種のまま特定建設業許可も追加で取得できますか?
同一の業種について、一般建設業許可と特定建設業許可を重複して受けることはできません。
一般建設業許可を受けている業種について特定建設業許可を受けた場合、その業種の一般建設業許可は効力を失い、特定建設業許可へ切り替わります(建設業法第3条第6項)。
一方、業種が異なる場合は、例えば土木工事業は特定建設業許可、舗装工事業は一般建設業許可というように、業種ごとに一般と特定を分けて許可を受けることができます(建設業許可事務ガイドライン【第3条関係】1(2))。
Q2. 元請として下請業者に材料を支給した場合、その材料費は5,000万円・8,000万円の基準に含まれますか?
含めません。元請負人が下請負人に提供する材料等の価格は、下請代金の額に算入しません(建設業許可事務ガイドライン【第3条関係】4)。ただし、下請負人が自ら材料を調達し、その材料費が下請契約の請負代金に含まれている場合は、その契約金額を基に判断します。
一方、そもそも建設業許可が必要か(軽微な建設工事に当たるか)を判断する場面では、注文者が提供する材料の市場価格や運送費を請負代金に加えて判断します(建設業法施行令第1条の2第3項)。同じ「材料」でも、判定の場面によって扱いが逆になります。
Q3. 二次下請として工事を受ける場合も、5,000万円・8,000万円の基準の対象になりますか?
対象になりません。この基準は、発注者から直接工事を請け負った元請負人が、その工事について下請契約を締結する場合に適用されます(建設業法第3条第1項第2号、第16条)。一次下請や二次下請以下の立場で受注した工事の一部をさらに下請に出す場合は、その金額が5,000万円以上(建築一式工事では8,000万円以上)になっても、それを理由に特定建設業許可が必要になることはありません。
ただし、下請として工事を請け負う場合でも、軽微な建設工事を超える工事については、原則として対応する業種の建設業許可が必要です。また、元請・下請の立場は工事ごとに判断します。
Q4. 契約変更で下請金額が増え、基準額以上になった場合はどうなりますか?
変更後の下請契約の総額が基準額以上になる時点で特定建設業許可を受けていなければ、建設業法第16条違反となります。当初の下請契約が基準額未満であっても、増額変更や追加の下請発注によって総額が基準額以上になる見込みがある場合は、その契約を締結する前に許可区分を確認してください。
Q5. 一般建設業許可のまま、5,000万円以上を下請に出してしまったらどうなりますか?
一般建設業許可しか受けていない建設業者が、発注者から直接請け負った工事について、下請契約の総額が5,000万円以上(建築一式工事では8,000万円以上)となる下請契約を締結すると、建設業法第16条違反となります。許可行政庁による指示処分や営業停止処分などの監督処分を受ける可能性があります(建設業法第28条)。
さらに、違反行為をした者は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となり、情状により両方が科されることもあります(建設業法第47条第1項第2号、同条第2項)。法人の業務として違反した場合は、法人にも1億円以下の罰金が科される可能性があります(建設業法第53条第1号)。基準額以上となる下請契約を締結する前に、必ず特定建設業許可を受けておいてください。
ご相談・お問い合わせ
一般建設業許可で足りるのか、特定建設業許可が必要なのかは、元請・下請の立場、工事内容、下請に出す予定の金額によって変わります。契約書の名称だけでは判断できないため、契約前・申請前の確認が大切です。
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