
建設業許可では、経営業務の管理責任者等と並んで「営業所技術者等」の要件確認が必要です。以前は「専任技術者」「専技(せんぎ)」と呼ばれていました。現在は一般建設業では「営業所技術者」、特定建設業では「特定営業所技術者」と呼び、両者をまとめて「営業所技術者等」と表記します。
一般建設業の営業所技術者になるルートは、資格、指定学科の学歴+実務経験、10年以上の実務経験の3つです。ただし、資格ルートでも、資格によっては取得後1年・3年・5年以上などの実務経験が必要です。さらに、その営業所に専任で勤務し、資格・実務経験・常勤性を書類で証明できなければなりません。
営業所技術者等とは
建設業法第7条第2号は、その営業所ごとに営業所技術者を専任の者として置くことを求めています。請負契約の締結および履行に関する技術上の管理をつかさどる者で、工法の検討、注文者への技術的な説明、見積などが職務です。配置先が工事現場ではなく営業所である点が、主任技術者・監理技術者との違いです。
営業所ごと・業種ごとに必要です
会社全体で1人ではなく、建設業を営む営業所が2か所あれば原則としてそれぞれに置きます。営業所とは本店、支店または常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいい、他の営業所に請負契約の指導監督を行うなど、建設業の営業に実質的に関与する本店・支店も含まれます(建設業法第3条第1項、同法施行令第1条、建設業許可事務ガイドライン【第3条関係】2)。単なる登記上の本店は該当しません。
要件は業種ごとに満たす必要がありますが、1人が2以上の業種の基準を満たしていれば同一営業所内で複数業種を兼ねられます(宮城県「建設業許可の手引き」令和8年3月改定版P.18、建設業許可事務ガイドライン【第7条関係】2(3))。
「専任」とは常勤して職務に従事すること
建設業許可事務ガイドライン【第7条関係】2(1)では、「専任」とはその営業所に常勤(テレワークを含みます)して専らその職務に従事することとされ、次の人は原則として認められません。
- 住所やテレワークの場所が営業所から著しく遠く、常識上通勤できない人
- 他の建設業者を含む別の営業所で専任を求められる地位にある人
- 管理建築士や専任の宅地建物取引士など、他の法令で別の事務所の専任を求められている人
- 他に個人事業を営む人や他法人の常勤役員など、別の事業に専任していると認められる人
同ガイドラインでは、勤務状況・給与の支払・人事権などから専任性が認められれば出向社員でも営業所技術者等として扱うとされています。ただし宮城県では出向契約書・覚書の写しや賃金の負担先が分かる資料が追加で必要になり、原則として出向者を工事現場の配置技術者とすることはできません(同手引きP.57注8)。
常勤性は健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書の写しなどで確認されます。通勤時間がおおむね2時間を超える場合は、通勤定期券や通勤経路図などの追加提出を求められます(同手引きP.69)。
営業所技術者等になれるルート
一般建設業の営業所技術者になるには、建設業法第7条第2号のイ・ロ・ハのいずれかに該当する必要があります。候補者は資格の有無から順に確認すると整理しやすくなります。
| 確認順 | ルート | 主な要件 |
|---|---|---|
| ① | 資格ルート 法第7条第2号ハ |
申請業種に対応する国家資格、技術検定、技能検定などを有する |
| ② | 学歴ルート 法第7条第2号イ |
申請業種に対応する指定学科を卒業し、卒業後3年または5年以上の実務経験がある |
| ③ | 実務経験ルート 法第7条第2号ロ |
申請業種について10年以上の実務経験がある |
①資格ルート
施工管理技士、建築士、技術士、電気工事士、技能検定の合格者などが対象です。ただし、資格があればすべての業種に対応でき、資格だけで要件を満たせるとは限りません。対応業種は資格の種類、級、検定種目、取得時期で決まります。
さらに、有資格コード一覧に「1年」「3年」「5年」と記載された資格は、取得後にその期間の実務経験も必要です。例えば第二種電気工事士は免状交付後3年以上、電気主任技術者は5年以上とされています。資格名と申請業種の対応に加え、追加の実務経験要件がないかを確認してください(同手引きP.69、P.72~77)。
②指定学科の学歴+実務経験ルート
申請業種に対応する指定学科の卒業者は、10年より短い実務経験で要件を満たせます。
| 卒業した学校(指定学科) | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 大学・高等専門学校 | 卒業後3年以上 |
| 専門士または高度専門士を称する専修学校 | 卒業後3年以上 |
| 高等学校・中等教育学校 | 卒業後5年以上 |
| 上記以外の専修学校 | 卒業後5年以上 |
学科名に「建築」「土木」「機械」などが含まれていても、申請業種の指定学科に該当するとは限りません(同手引きP.70の指定学科一覧)。
③10年以上の実務経験ルート
資格や指定学科の学歴がなくても、その業種について10年以上の実務経験があれば要件を満たせる可能性があります。認められる職務の範囲と年数の数え方は後述します。
実務経験の年数を短縮できる場合があります
技術検定の合格者は、次のとおり10年より短い実務経験で要件を満たせます(建設業法施行規則第7条の3、同手引きP.18)。
- 一級の第一次検定または第二次検定に合格した後3年以上の実務経験
- 二級の第一次検定または第二次検定に合格した後5年以上の実務経験
ただし土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園の指定建設業7業種と電気通信工事業では、この年数短縮は利用できません。
このほか、大工、とび・土工、屋根、しゅんせつ、ガラス、防水、内装仕上、熱絶縁、水道施設、解体の10業種では、関連する2業種で合計12年以上、うち申請業種で8年を超える実務経験があれば要件を満たせます。組合せは業種ごとに決まっています(同手引きP.29)。
どのルートでも、申請業種との対応、必要な経験年数、常勤性、証明資料の有無をセットで確認してください。
特定建設業では特定営業所技術者が必要です
特定建設業の営業所には特定営業所技術者を専任で置きます(建設業法第15条第2号)。国土交通大臣が定める試験に合格した人や免許を受けた人のほか、一般建設業の要件を満たし、元請として請負代金4,500万円以上(昭和59年10月1日前は1,500万円以上、同日以降平成6年12月28日前は3,000万円以上)の工事について2年以上の指導監督的な実務経験を有する人が対象です(建設業法施行令第5条の3、同手引きP.79)。
ただし前述の指定建設業7業種では、特定営業所技術者は一級の国家資格者、技術士などの法定資格者、または国土交通大臣の認定を受けた人に限られます(建設業法施行令第5条の2、同法第15条第2号ただし書)。この7業種では、実務経験だけを根拠に特定営業所技術者になることはできません。詳しくは一般建設業許可と特定建設業許可の違いとは?判断基準を解説をご覧ください。
実務経験に含まれるもの・含まれないもの
建設業許可事務ガイドライン【第7条関係】2(2)では、「実務の経験」とは建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいうとされ、単なる雑務だけの期間は含まれません。設計技術者としての設計、現場監督としての監督、土工およびその見習いとしての従事は含まれます。判断は肩書きではなく、工事内容と職務内容によります。
実務経験は在籍期間ではなく工事実績の積み上げで見ます。宮城県では12か月×必要年数分(10年であれば120か月分)の実績で確認するとされています(同手引きP.69)。工事経歴書や契約書で示せるかが実際の壁です。
同じ期間に複数業種の工事を担当していても、経験期間は原則として二重に計算できません。ただし例外があり、平成28年5月31日までにとび・土工工事業の許可で請け負った解体工事の経験は、とび・土工工事業と解体工事業の双方の実務経験として二重に計算できます(同ガイドライン)。
資格や登録がなければ算入できない工事があります
電気工事や消防施設工事のうち、電気工事士免状・消防設備士免状等の交付を受けた者等でなければ直接従事できない工事は、免状等の交付を受けた者等として従事した実務経験に限り算入されます(同ガイドライン、同手引きP.69)。
さらに宮城県では、電気工事業の実務経験は、電気工事業の業務の適正化に関する法律第3条の登録を受けて営業した期間、または登録を受けた営業所に従事した期間のみが認められます(同手引きP.69~70)。
解体工事は全国共通で、建設リサイクル法施行後の経験は土木・建築・解体工事業の建設業許可、または解体工事業登録で請け負ったものに限られます(同手引きP.70)。
経営業務の管理責任者等との兼務
経営業務の管理責任者等と営業所技術者等は別の要件です。同じ人が兼ねられますがそれぞれの基準を満たす必要があり、代表取締役だからといって自動的に営業所技術者等になれるわけではありません。兼務できるのは同一営業所内に限られます(建設業許可事務ガイドライン【第7条関係】2(3))。
主任技術者・監理技術者との違いと兼務
| 技術者 | 役割・配置場所 | 根拠 |
|---|---|---|
| 営業所 技術者等 |
営業所に置き、請負契約の締結・履行に関する技術上の管理を担当 | 法第7条第2号 法第15条第2号 |
| 主任技術者 | 工事現場に置き、工事の施工上の管理を担当 | 法第26条 第1項 |
| 監理技術者 | 工事現場に置く。元請の特定建設業者が、下請契約の総額5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上)となる場合に必要 | 法第26条 第2項 |
営業所技術者等は営業所に常勤して専ら職務に従事するため、原則として工事現場の主任技術者・監理技術者を兼ねることはできません。ただし、現場専任を必要としない工事については、一定の要件を満たす場合に例外的に兼務できます。
さらに令和6年の改正により、現場専任が必要な工事でも、建設業法第26条の5の要件を満たせば、営業所技術者は主任技術者を、特定営業所技術者は主任技術者または監理技術者を兼務できる制度が設けられました。
ただし、契約した営業所、請負代金、現場数、営業所からの移動時間(おおむね2時間以内)、下請次数(3次まで)、連絡員の配置、情報通信機器の設置など、複数の要件をすべて満たす必要があります(建設業法施行規則第17条の5、第17条の6)。距離が近いことや工事金額が小さいことだけで、当然に兼務できるわけではありません。
名義貸しは許可取消しと罰則の対象です
社内に資格者や実務経験者がいないからといって、営業所に常勤・専任していない外部の有資格者から名義だけを借り、営業所技術者等として申請・届出することはできません。基準を満たさなくなった場合は建設業法第29条第1項第1号、不正の手段により許可を受けた場合は同項第7号に基づく許可取消しの対象になります。
申請書や添付書類に虚偽の記載をして提出した場合は、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(同法第50条第1項第1号)。さらに、虚偽または不正の事実に基づいて許可を受けた場合は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となり(同法第47条第1項第5号)、法人には1億円以下の罰金が科される可能性があります(同法第53条第1号)。名義貸しは、許可と事業を失うリスクがあります。
退職・交代は許可の維持に直結します
営業所技術者等が退職し後任者がいない状態になると、許可基準を満たさなくなります。営業所技術者等の交代については建設業法第11条第4項、後任者がおらず許可基準を満たさなくなった場合は同条第5項に基づき、原則として2週間以内の手続が必要です。ただしこれは届出の期限であり、不在を認める猶予期間ではありません。原則として退職日までに後任者を確保してください。
後任者への交代や追加では、変更届出書(様式第二十二号の二(第一面))、営業所技術者等証明書(様式第八号)、営業所技術者等一覧表(別紙4)のほか、資格証明書や実務経験証明書(様式第九号)など要件を証明する書類が必要です。特定建設業で指導監督的実務経験を根拠とする場合に限り、指導監督的実務経験証明書(様式第十号)が加わります(指定建設業を除く)。
一方、営業所の廃止などに伴って営業所技術者等を削除する場合は、届出書(様式第二十二号の三)と営業所技術者等一覧表(別紙4)を使用します。交代と削除で様式が異なるため、変更内容に応じて確認してください(同手引きP.113~114、P.122)。
高齢の代表者だけが要件を満たしている、複数業種を1人に依存しているといった場合は特に注意が必要です。後任者を実務経験で立てるには資料収集に時間がかかり、確保できなければ該当業種の廃止などが必要になります。平時から候補者を確認しておくことが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 実務経験10年は、同じ会社に10年勤めていれば認められますか?
在籍期間だけでは認められません。宮城県では申請業種について通算120か月以上の工期を確認します。許可業者での経験は決算変更届の表紙と工事経歴書、許可のない事業者での経験は工事請負契約書や注文書などを必要期間分そろえます。当時の常勤性を示す資料も必要です。
Q2. 対応する資格があれば、実務経験は不要ですか?
資格によります。資格だけで要件を満たせるものもありますが、取得後に1年・3年・5年以上の実務経験が必要なものもあります。資格と許可業種の対応表だけでなく、有資格コード一覧に記載された追加の経験年数も確認してください。
Q3. 前に勤務していた会社での経験も使えますか?
申請業種の実務経験で、工事内容と在籍期間を資料で証明できれば使用できる場合があります。実務経験証明書は原則として当時の勤務先の代表者または個人事業主が証明するため、元勤務先の協力が得られるかを早めに確認してください。
Q4. 営業所技術者等が退職したら、2週間以内に後任を探せばよいですか?
いいえ。2週間以内は変更届の提出期限であり、不在を認める猶予期間ではありません。原則として退職日までに後任者を確保してください。
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