建設業許可の経営業務管理責任者とは?該当する人・しない人

建設業許可の経営業務管理責任者とは?該当する人・しない人

建設業許可を検討し始めると必ず出てくるのが「経営業務管理責任者」や「経管」という言葉です。実務では今もこの呼び方が使われますが、現在の制度で求められるのは、建設業の経営業務を適正に管理できる体制です。申請書類では、満たし方に応じて「常勤役員等」または「常勤役員等および当該常勤役員等を直接に補佐する者」として証明します。

この要件は肩書きだけでは判断できません。建設業法第7条第1号は「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」を求め、具体的な基準は建設業法施行規則第7条にあります。問われるのは、必要な立場で一定期間の経験があり、それを申請先が求める書類で証明できるかです。

確認資料や経験年数の数え方には、都道府県ごとの運用があります。この記事では宮城県独自の取扱いに【宮城県】と表示し、宮城県「建設業許可の手引き」(令和8年3月改定版)の該当ページを併記しました。他県の方は申請先の最新の手引きを確認してください。

目次 Outline

まず確認|該当する人・しない人の目安

該当する可能性がある人と、原則として該当しにくい人の目安です。最終的には、経験した地位、業務内容、期間、常勤性、証明資料をもとに申請先が判断します。

この表は、現在そのまま常勤役員等になれるかと、過去の経験を要件に使えるかの両方の目安です。「経験としてあり」は、過去の経験は使える一方、現在の常勤役員等になるには別途、常勤の役員等に就任する必要があることを意味します。

立場 該当可能性 主な確認事項
建設会社の常勤取締役 あり 必要な在任期間があり、その期間に会社が建設工事を請け負っていたことを証明できるか
建設業を営む個人事業主 あり 確定申告書や工事請負契約書、注文書、請求書、入金資料などが残っているか
支店長・営業所長 経験としてあり 支店・営業所の代表者として、請負契約の締結・履行に一定の権限を持つ地位にあったことを証明できるか。現在の常勤役員等になるには、別途、常勤の役員等への就任が必要
執行役員 要確認 取締役会の決議などにより、建設業に関する事業部門全体の業務執行権限を委譲されていたか
現場監督・主任技術者 原則なし 技術者としての経験だけでは足りず、役員等や支店長等の地位で経営業務を管理した経験が必要
監査役 原則なし 監査役は、原則として経営業務を執行する役員には含まれない
非常勤役員 経験としてあり 過去の役員経験として認められる可能性があるか。現在の常勤役員等にはなれず、常勤の役員等への就任が必要

経営業務管理責任者とは、建設業の経営管理体制のこと

条文上は「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」

建設業法第7条第1号は、許可の基準として次の能力を求めています。

建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること

一般建設業許可・特定建設業許可のどちらでも必要な要件です。

「経験者が1人いること」だけを求める制度ではない

令和2年10月の制度改正前は、該当する人が1人いるかどうかで判断されていました。現在は、常勤役員等が1人で満たす方法に加えて、一定の経験を持つ常勤役員等と、その人を直接補佐する者を置き、組織として満たす方法も認められています。

要件を満たす3つのパターン

建設業法施行規則第7条第1号は、経営管理体制の要件をイ・ロ・ハに分けています。イは常勤役員等が1人で満たす方法、ロは補佐する人を置いて組織で満たす方法、ハは国土交通大臣の認定を受ける方法です。

パターンイ|常勤役員等が1人で満たす

常勤役員等のうち一人が、以下のいずれかの要件に該当する必要があります。

  • 建設業に関し、5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有すること。
  • 建設業に関し、経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者 (経営業務を執行する権限の委任を受けた者)として、 5年以上、経営業務を管理した経験を有すること。
  • 建設業に関し、経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として、 6年以上、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有すること。

パターンロ|補佐する人を置いて組織で満たす

常勤役員等のうち一人が以下の①または②に該当し、加えて、 常勤役員等を直接補佐する者が③から⑤の要件を満たす必要があります。

常勤役員等のうち一人の要件
  • 建設業に関し、2年以上の役員等としての経験を有し、かつ、 5年以上、役員等または役員等に次ぐ職制上の地位にある者として、 財務管理、労務管理または業務運営を担当した経験を有すること。
  • 5年以上の役員等としての経験を有し、そのうち建設業に関する 役員等としての経験が2年以上あること。
常勤役員等を直接補佐する者の要件
  • 申請事業者において、建設業に関する財務管理の業務経験を 5年以上有すること。
  • 申請事業者において、建設業に関する労務管理の業務経験を 5年以上有すること。
  • 申請事業者において、建設業に関する業務運営の業務経験を 5年以上有すること。

パターンロの②は、5年の中に建設業に関する2年以上が含まれていればよく、足して7年必要という意味ではありません。

また③~⑤のうち複数の業務経験を有する者であるときは、その一人の者が当該業務経験に係る常勤役員等を直接補佐する者を兼ねることができます(規則第7条第1号ロ、同手引き P.16)。3人を別々に置く必要はありません。

パターンハ|国土交通大臣の認定を受ける

イまたはロと同等以上と国土交通大臣が認定した場合です。知事許可申請では一般的でないため、該当しそうなら申請先へ確認してください。

イまたはロで満たす場合、申請時に提出する証明書は次のとおりです(規則第3条第1項第1号)。

  • イで満たす場合:常勤役員等証明書(様式第七号)
  • ロで満たす場合:常勤役員等および当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書(様式第七号の二)

常勤役員等とは誰を指すのか

法人の場合はその役員のうち常勤であるもの、個人の場合はその者または支配人をいいます(規則第3条第1項第1号)。「役員」には、業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者が含まれます(同手引き P.15)。登記されていても、名前だけの役員や非常勤役員は該当しません。

執行役員・監査役は原則対象外|執行役との違いに注意

指名委員会等設置会社の「執行役」は役員に含まれますが、社内の役職名として置かれる「執行役員」は、当然には含まれません。建設業許可事務ガイドラインでは、執行役員、監査役、会計参与、監事、事務局長等は原則として「役員」に含まれないとされています。執行役員等は、取締役会の決議などにより建設業に関する事業部門の業務執行権限の委譲を受けている場合に限り、「これらに準ずる者」として認められます。

注意したいのは、建設業に関する事業の一部だけを担当していた場合は除かれる点です。土木・建築の両部門がある会社で建築部門だけを担当していた場合や、資金・資材調達だけを担当していた場合が該当します。経験を使う場合は、組織図、業務分掌規程、取締役会議事録などで権限の範囲を証明します。

他社との兼務がある場合は常勤性に注意

ここでいう常勤とは、原則として本社・本店等において、休日などを除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している状態をいいます(テレワークを行う場合を含みます)。ガイドラインでは、他の営業所(他の建設業者の営業所を含みます)で専任を要する者や、管理建築士・専任の宅地建物取引士など他の法令で専任を求められる者は、勤務場所が同一である場合などを除き常勤と認められません。

【宮城県】常勤性はどのように確認されるか

宮城県では、法人はイ→ロ→ハ→ニの順に次のいずれかで確認するとされています(同手引き P.56)。個人事業主はニの確定申告書によります。

イ 健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書の写し、または70歳以上被用者標準報酬月額相当額決定のお知らせ
ロ 健康保険・厚生年金被保険者資格取得確認および報酬決定通知書の写し
ハ 住民税特別徴収義務者指定および税額通知の写し
ニ 確定申告書の写し(法人は法人税確定申告書の表紙および役員報酬手当等・人件費の内訳書、個人は所得税確定申告書の表紙および第二表)

あわせて標準報酬月額も確認されます。また、現住所から営業所までの標準的な通勤時間がおおむね2時間を超える場合は、通勤定期券、通勤経路図、高速道路料金の領収証、ETC利用明細書などの追加資料を求められます(同 P.56)。

出向者を常勤役員等とすることもできますが、出向契約書・覚書の写し、賃金相当額の負担先が確認できる資料、所属企業の雇用証明書の写しなどが必要です(同 P.57 注8)。

【宮城県】経営経験は証明できることが重要

審査では、常勤性に加えて「必要な役職にあったこと」と「その期間に建設業を営んでいたこと」を証明します。

役職名と経験年数を示す資料

宮城県では主に次の資料で確認します(同 P.56)。

  • 法人の役員:役員を経験した法人の登記事項証明書、または閉鎖した役員欄の謄本(期間分)
  • 建設業法施行令第3条の使用人:期間分の建設業許可申請書と、着任時・退任時の変更届出書の副本の写し
  • 個人事業主:経営経験を証明する期間分の所得税確定申告書の写し

確定申告書を使う場合、宮城県では令和6年12月以前に税務署へ提出したものは、収受日付印が押されたものが必要とされています。電子申告なら税務署の受信通知を添付します(同 P.57 注2)。なお税務署では令和7年1月以降、控えへの収受日付印の押なつを取りやめています。申告時期で使える資料が変わるため、控えの保管状況を早めに確認してください。

建設工事を請け負っていたことを示す資料

役員や個人事業主であったことだけでは足りず、その期間に建設工事を請け負っていたことも証明します。宮城県では主に次の資料で確認します(同 P.56)。

  • 変更届出書(決算報告)の表紙および「直前3年の各事業年度における工事施工金額」(様式第三号)の写し
  • 工事請負契約書または注文書等の写し(工事請書のみの提出は不可。また、注文者の署名又は押印のないものや担当者の押印のみの契約書・注文書等は不可。)
  • 発注証明書、領収書または請求書と、入金を確認できる資料

経験年数は概ね四半期に1件程度の工事で確認される

宮城県では、建設工事を請け負っていた期間について概ね四半期に1件程度の工事を確認するとされています。工期の始期と終期が属する四半期を含めてカウントします(同 P.57 注3)。

5年間取締役として登記されていても、その5年間を通じた請負実績を証明できなければ、在任期間のすべてが経営経験として認められるとは限りません。在任期間と、請負実績を証明できる期間は必ずしも一致しません。申請前に、四半期ごとに使える工事資料があるかを確認してください。

社会保険の加入も許可要件に含まれる

建設業法施行規則第7条第2号は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、適用事業所に該当するすべての営業所で加入の届出を行っていることを求めています。経験を満たしていても、未加入であれば法第7条第1号の基準を満たしません。

常勤役員等は許可取得後も必要

この要件は、許可を取得するときだけ満たせばよいものではありません。建設業法第29条第1項第1号は、一般建設業者が法第7条第1号または第2号の基準に適合しなくなった場合、許可を取り消さなければならないと定めています。特定建設業者は法第7条第1号または第15条第2号が対象です。

常勤役員等が退任・交代する場合は、空白期間が生じないよう、交代時点で要件を満たす後任者または新たな経営管理体制を確保する必要があります。これらに代わる者または経営体制があるときは、変更後2週間以内に必要書類を提出します(建設業法施行規則第7条の2第2項、同手引きP.113)。後任者等がおらず空白期間が生じた場合は、許可要件を欠くことになるため注意が必要です。

まとめ

経営業務管理責任者は、現在の制度では建設業の経営管理体制として審査されます(建設業法第7条第1号、施行規則第7条)。満たし方はイ・ロ・ハの3つです。宮城県では常勤性、役職名と経験年数、請負実績を資料で確認します。「経験があるか」だけでなく、「証明できるか」「取得後も維持できるか」で考えてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 建設業許可を持っていない会社での取締役経験は使えますか?

許可を持っていなかった会社での取締役経験でも、建設業を営んでいた事実を証明できれば使える可能性があります。在任期間に加えて、その期間に建設工事を請け負っていたことを契約書や注文書、請求書、入金資料などで示します。

宮城県では、工事請書だけの提出や、注文者の署名または押印がない注文書、担当者の押印しかない契約書等は認められません(同手引き P.56)。手元の資料を早めに確認してください。

Q2. 更新時に経営経験の資料をもう一度提出しますか?

宮城県知事許可では、過去に常勤役員等として証明された人を再度証明する場合、今回の常勤役員等証明書と過去の証明書の記載内容が同一であることなどを条件に、役職名や経験年数の確認資料を省略できることがあります(同 P.57 注6)。

対象は宮城県知事許可で証明された人で、他県知事許可や大臣許可で証明された場合は同じ扱いができません。省略できるのは資料の提出であり、要件の審査ではありません。

Q3. 現場監督を5年以上していれば要件を満たしますか?

現場監督の経験だけでは、原則として満たしません。求められるのは、役員、個人事業主、支店長、営業所長などの地位で経営業務を総合的に管理した経験です。技術者としての経験とは別に判断されます。

ただし、現場監督をしながら取締役や個人事業主などの地位にあり、実際に経営業務を管理していた期間があれば、その期間を使える可能性があります。

Q4. 補佐する人を置けば、社長に建設業の経験がなくても許可を取れますか?

取れません。パターンロでも、常勤役員等本人に建設業に関する2年以上の役員等としての経験が必要です。①②のどちらにもこの2年が条件として入っています(規則第7条第1号ロ(1)(2))。

補佐する人は、常勤役員等の経験不足を埋めるための仕組みではなく、財務管理・労務管理・業務運営の体制を組織として整えるためのものです。建設業の経験がまったくない人を常勤役員等に据えることはできません。

ご相談・お問い合わせ

該当するか確認する場合は、候補者について次を整理しておくとスムーズです。

  • 役員、個人事業主、支店長等としての在任期間
  • 在任期間中の建設工事の請負実績
  • 登記事項証明書、確定申告書、工事関係資料の有無
  • 現在の勤務状況と他社との兼務状況

当事務所では、建設業許可の要件確認、申請書類の作成・提出手続、経営経験を証明する資料の整理に対応しています。宮城県内・仙台市周辺で建設業許可の取得を検討している方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事を書いた人 Wrote this article

村上敦志