
「500万円未満だから、建設業許可はいらない」と考えて工事を請け負っていたところ、後から許可が必要だったと分かるケースがあります。
建設工事を請け負って営業する場合、建設業許可は原則として必要です。許可なく請け負えるのは、「軽微な建設工事」に限られます。
問題は、この軽微な建設工事の判断が、見た目ほど単純ではないことです。500万円という金額だけを見ても、消費税、支給材料、単価契約、契約分割、追加工事の扱いを誤ると、意図せず無許可営業になるおそれがあります。
この記事では、建設業許可が必要なケース・不要なケースの基本を、実務で迷いやすい順に整理します。制度の一般的な説明であり、個別の契約内容に当てはめる際は、管轄の都道府県窓口や専門家への確認が必要です。
建設業許可が必要となる「建設業」とは
建設業法上の「建設業」と「請負」
建設業法上の「建設業」とは、元請・下請その他いかなる名義を問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいいます(建設業法第2条第2項)。建設業を営もうとする者は、軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者を除き、建設業の許可を受けなければなりません(同法第3条第1項、同法施行令第1条の2第1項)。また、請負とは、当事者の一方が仕事の完成を約束し、相手方がその結果に対して報酬を支払うことを約束する契約をいいます(民法第632条)。
許可を受けなくてもできる工事(軽微な建設工事)とは
工事一件の請負金額(消費税込)が次のもの(「軽微な建設工事」)については、許可がなくても請け負うことができます。
| 建築一式工事 | 次のいずれかに該当する場合 (1)1件の請負代金が1,500万円未満の工事 (2)請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延べ面積が150㎡未満の工事 (主要構造部が木造で、延べ面積の2分の1以上を居住の用に供すること。) |
| 建築一式工事以外の工事 | 1件の請負代金が500万円に満たない工事 |
建設業許可が必要か確認する判定フロー
上の表に当てはまる工事であれば、当該工事を請け負うための建設業許可は、建設業法上、原則として不要です。ただし、次のような場合は、金額の数え方によって基準以上になることがあります。いずれも1件の請負代金は税込で判断します。
500万円判定フロー
建設業許可が必要かどうかを、工事1件の請負代金と工事内容から確認します。
「工事1件の請負代金」を正しく計算する
-
1
消費税を含める
税抜金額の場合は消費税・地方消費税を加える (例:税抜460万円 → 税込506万円) -
2
支給材料の価格を加える
注文者から材料の提供を受ける場合は、その市場価格と、 必要に応じて運送費を請負代金に加える -
3
工事全体の金額を確認する
正当な理由なく複数の契約に分割した場合は合算する。 追加・変更契約がある場合も、同一工事として扱うべきか確認する
= 税込・支給材料込み・必要な合算後の「工事1件の請負代金」
建築一式工事ですか?
建築一式工事とは、総合的な企画・指導・調整のもとに
建築物を建設する工事です。
「一式工事」「リフォーム一式」「原状回復」「メンテナンス」
などの契約名だけでは決まりません。
実際の工事内容で判断します。
ここに注意
- 基準は500万円未満です。 ちょうど500万円は許可が必要です。
- 木造住宅とは、主要構造部が木造である住宅・共同住宅のほか、 延べ面積の2分の1以上を居住用に使用する併用住宅をいいます。
- 建築一式工事は、複数の専門工事を含んでいるという理由だけで 該当するものではありません。
- 建設業許可が不要な金額であっても、 解体工事業の登録や 電気工事業の登録・通知など、 別の手続きが必要になる場合があります。
※一般的な判定方法です。工事区分や契約の分割・追加変更工事の扱いは、 個別の契約内容や施工内容によって判断が異なる場合があります。
500万円基準の計算で注意するポイント
500万円は税込金額で確認する
500万円の判定は、消費税を含めた金額で確認します。たとえば税抜460万円の契約でも、消費税10%を加えると506万円となり、税抜では500万円未満でも税込では500万円以上になるため、軽微な建設工事には当たりません。国土交通省の「建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問」でも、条文上の「請負代金の額」は消費税及び地方消費税を含む額とされています。見積書や注文書では、税込金額まで確認しておく必要があります。
材料支給がある場合は手間賃だけで見ない
発注者や元請が材料を支給し、施工業者が手間だけを請け負う場合でも、手間賃だけで500万円を判定するわけではありません。建設業法施行令第1条の2第3項は、注文者が材料を提供する場合、その材料の市場価格(または市場価格と運送賃)を請負代金の額に加えると定めています。つまり、支給された材料の価格も金額判定に影響します。
1件ごとの金額で判断する(年間売上ではない)
建設業許可の要否は、年間売上ではなく、1件の建設工事ごとの請負代金で判断します。「年間売上が500万円を超えたら許可が必要」という仕組みではありません。ただし、この「1件」の数え方が判断の分かれ目になり、実質的に一体の工事を複数の契約に分けても、1件として合算される場合があります(次章)。
単価契約は工事全体の額で判断する
1日当たり、1㎡当たり、1個当たりなどの単価を定める契約でも、その単価だけで500万円未満かどうかを判断するわけではありません。単価契約は、1件の工事に係る全体の額で判断します。契約時点で数量が確定していない場合に、どこまでを1件の工事とみるか、どの金額を基準とするかは、契約内容や発注方法によって異なることがあるため、個別に許可行政庁へ確認する必要があります。
契約分割・追加工事の判断方法
工事を分けても合算されることがある
同一の事業者が、一つの建設工事の完成を二つ以上の契約に分けて請け負う場合は、正当な理由に基づいて分割したときを除き、各契約の請負代金額を合計して判断します(建設業法施行令第1条の2第2項)。当初から一体として予定されていた同じ建物の内装工事を「床」「壁」「天井」に分けて契約しても、契約書を分けただけで別の工事として扱われるとは限りません。
追加工事で500万円を超えるケース
当初契約が480万円でも、工事中の追加工事で合計500万円以上になることがあります。当初契約だけを見て「許可不要」と言い切るのは危険です。追加工事が当初工事と一体か別個の工事かは内容によって変わるため、追加工事を含めた同一工事の請負代金が500万円以上となる場合は、追加・変更契約を締結する前に許可の要否を確認し、許可が必要であれば、必要な許可を受けた後に契約する必要があります。
書類で確認できる状態にしておく
金額や工事内容の判断は、後から確認できる書類が重要です。建設工事の請負契約を締結する際は、建設業法第19条に定める事項を書面または法令上認められた電子的方法で明確にする必要があります。追加・変更工事についても、工事内容、金額、工期などを、原則として追加・変更工事に着手する前に書面または法令上認められた電子的方法で明確にしておきましょう。口頭の取り決めだけでは、後から説明が難しくなります。
この工事に建設業許可が必要か、判断に迷っていませんか?
請負金額の数え方や必要な許可業種は、契約内容や工事内容によって判断が異なります。宮城県内・仙台市周辺で判断に迷う案件がある場合は、契約を締結する前にご相談ください。
お問い合わせフォームへ元請でも下請でも金額基準は確認します
「下請だから建設業許可はいらない」というのは誤りです。要否は元請か下請かではなく、請け負う工事の内容と金額で判断します。下請として税込500万円以上の専門工事を請け負う場合も、原則としてその業種の建設業許可が必要で、孫請けであっても建設業法の適用を受ける点は同じです。
なお、法律上は許可が不要な軽微な建設工事であっても、元請会社が独自の取引基準として、建設業許可を持つ業者だけに発注先を限定することがあります。「許可番号を教えてほしい」と求められ、それをきっかけに許可取得を検討するケースもあります。法律上の許可要件と、取引先が定める契約条件は分けて考えておくと、判断が整理しやすくなります。
また、発注者から直接請け負った元請工事について、下請に出す契約金額の合計が大きくなる場合は、一般建設業許可と特定建設業許可のどちらが必要かという別の判断が加わります。この違いについては、一般建設業許可と特定建設業許可の違いとは?で詳しく解説しています。
建築一式工事は2つの基準で判断する
建築一式工事については、①1件の請負代金が税込1,500万円未満の工事、または②請負代金にかかわらず、延べ面積150㎡未満の木造住宅工事が、軽微な建設工事に該当します。専門工事の500万円基準とは異なるため、工事区分を正しく確認する必要があります。ただし建築一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事を指します。複数の専門工事を含む、あるいは契約書に「リフォーム工事一式」「改修工事一式」と記載されているというだけでは該当しません。
実際の工事内容が内装仕上工事、塗装工事、電気工事、管工事などの専門工事に当たる場合は、それぞれの専門工事として、原則、税込500万円未満かどうかで許可の要否を判断します。なお、建築一式工事の許可があっても、500万円以上の専門工事を単独で請け負うには、その業種の許可が必要です。
許可業種に附帯する工事を請け負える場合があります
許可を受けた建設工事に附帯する他の業種の工事は、その業種の許可がなくても、主たる工事と一体として請け負える場合があります(建設業法第4条)。たとえば電気工事業の許可で電気配線工事を請け負い、その過程で必要になった内装の一部改修は、附帯工事として一体で請け負えることがあります。
ただし、単に同じ現場で施工するというだけで附帯工事になるわけではありません。附帯工事とは、主たる工事の施工により必要が生じた従たる工事であって、それ自体が独立した使用目的に供されるものではないものをいい、注文者の利便や請負契約の慣行を基準に、一連または一体の工事として施工することが必要または相当と認められるかを総合的に判断します(建設業許可事務ガイドライン【第4条関係】)。「附帯工事だから何でもできる」わけではありません。
また、附帯工事が軽微な建設工事に当たらない(専門工事で1件税込500万円以上になる)場合は、その業種の主任技術者となれる要件を満たす技術者(専門技術者)を置いて自ら施工するか、その業種の許可を受けた業者に施工させる必要があります(建設業法第26条の2第2項)。
許可が不要でも別の手続きが必要な場合があります
建設業許可の要否と、他の法令上の手続きは別の問題です。軽微な建設工事に当たる場合でも、工事の内容によっては次のような手続きが必要になることがあります。
- 解体工事を請け負う場合、土木工事業、建築工事業または解体工事業のいずれの建設業許可も受けていないときは、工事を施工する区域を管轄する都道府県知事の登録を受ける必要があります(建設リサイクル法第21条第1項)。この登録は、請負金額にかかわらず必要です。
- 電気工事業を営む場合は、施工する電気工作物の種類と建設業許可の有無に応じて、電気工事業法に基づく登録、通知、みなし登録の届出またはみなし通知が必要です。建設業許可を受けていても、電気工事業法上の手続が不要になるわけではありません(電気工事業法第3条第1項、第17条の2第1項、第34条第4項・第5項)。
「建設業許可がいらないから、何の手続きもいらない」とは限りません。工事の内容に応じて、関係する制度を個別に確認する必要があります。
無許可で営業した場合の罰則
軽微な建設工事に当たらない工事を許可なく請け負うと、無許可営業として罰則の対象になります。許可を受けないで建設業を営んだ者は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処せられる可能性があり(建設業法第47条第1項第1号)、従業者などが業務に関して違反した場合は、行為者だけでなく法人にも1億円以下の罰金が科されることがあります(同法第53条第1号)。
さらに見落としやすいのが、その後の許可取得への影響です。建設業法違反により罰金以上の刑に処せられると、刑の執行を終えた日などから5年間は建設業許可を受けられません(同法第8条。欠格要件)。「軽微だと思って続けていた工事が、実は無許可営業だった」という事態は、目先の罰則にとどまらず、その後の許可取得にも影響しかねません。逆にいえば、金額の数え方に少しでも不安がある案件を契約前に確認しておくことで、こうしたリスクを低減できます。
まとめ
建設業許可が必要かどうかは、「500万円未満かどうか」だけでは決まりません。本記事の「500万円判定フロー」の手順どおり、まず「1件の請負代金」を正しく計算し、建築一式工事か専門工事かで基準額(1,500万円か500万円か)を確認するのが出発点です。「リフォーム一式」「工事一式」という名称でも、実態が専門工事であれば500万円基準で判断します。
また、軽微な建設工事に当たる場合でも、解体工事業の登録や電気工事業の登録・通知など、別の制度が関係することがあります。契約書、見積書、注文書、工事内容、材料支給の有無を整理し、建設業許可の要否と他法令上の手続きを分けて確認することが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 建築一式工事の許可があれば、500万円以上の内装工事も単独で請け負えますか?
単独では請け負えません。建築一式工事の許可は、総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する工事に対応するものです。内装仕上工事などの専門工事を単独で請け負う場合は、1件の請負代金が税込500万円以上であれば、その業種の許可が必要です。
どの業種で許可を取るべきかは、建設業許可の29業種とは?選び方と注意点で解説しています。
Q2. 元請から支給される材料の価格が分からない場合はどうすればよいですか?
支給材料を金額に含めず、手間賃だけで500万円基準を判断することはできません。注文者が材料を提供する場合は、その材料の市場価格と、必要に応じて運送賃を加えて判断します。元請や発注者に価格を確認し、支給明細や見積書などに金額を残しておきましょう。確認できない場合は、契約前に管轄窓口へ相談してください。
Q3. 材料も含めて税込ちょうど500万円の場合は、許可が必要ですか?
軽微な建設工事は、請負代金の額が「500万円に満たない工事」とされています(建設業法施行令第1条の2第1項)。税込ちょうど500万円の場合は500万円未満に当たらないため、軽微な建設工事とはいえず、建築一式工事以外の建設工事であれば、原則として、その工事に対応する業種の許可が必要です。「ちょうど」の金額は判断を誤りやすいため、契約前に確認が必要です。
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