
建設業許可が必要だと分かったら、次の課題は「自社は要件を満たしているのか」です。建設業許可は申請書と必要書類をそろえれば取得できるものではなく、建設業の経営経験、技術者の資格・実務経験、財産状況、過去の処分歴や刑罰歴など、短期間では準備できない事情も審査されます。
一般建設業許可の基準は建設業法第7条、特定建設業許可の基準は同法第15条、欠格要件は同法第8条に定められており、実務ではこれらを合わせて「5つの要件」として整理します。この記事では5つの要件と、申請前につまずきやすいポイントを解説します。審査方法や必要な確認資料は申請先で異なることがあるため、個別の事情は管轄行政庁の最新の手引きで確認してください。
建設業許可の要件は大きく5つあります
建設業許可を受けるには、原則として次の5つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも満たせない要件があると、許可を受けることはできません。
| 要件 | 主な内容 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 経営業務の管理体制 | 建設業の経営経験がある常勤役員等がいる、または常勤役員等を直接補佐する体制がある | 法第7条第1号 法第15条第1号 |
| 営業所技術者等 | 建設業法上の営業所ごとに、申請業種に対応する技術者を専任で置ける | 法第7条第2号 法第15条第2号 |
| 誠実性 | 請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでない | 法第7条第3号 法第15条第1号 |
| 財産的基礎 | 請負契約を履行できる財産的基礎または金銭的信用がある | 法第7条第4号 法第15条第3号 |
| 欠格要件に 該当しない |
役員等に一定の処分歴・刑罰歴などがなく、申請書類に虚偽や重要な記載漏れがない | 法第8条 |
このほか、健康保険、厚生年金保険および雇用保険について、適用事業所に該当する営業所が必要な届出を行っていることも確認されます。これは経営業務の管理体制に関する要件の一部で、建設業法施行規則第7条第2号に定められています。
要件1 経営業務の管理体制がある
建設業の経営を管理できる体制が必要です
建設業法第7条第1号は、建設業に係る経営業務の管理を適正に行う能力を求めています(同法第15条第1号により特定建設業にも適用)。具体的な基準は建設業法施行規則第7条第1号にあり、常勤役員等が1人で満たす方法と、直接補佐する体制で満たす方法の2つがあります。実務では「経管(けいかん)」と呼ばれ、工事の施工技術ではなく、建設業という事業の経営を管理してきた経験が問われます。
1つ目は、常勤役員等が1人で満たす方法です。建設業の役員として5年以上経営に携わってきた方などが典型例です(準ずる地位での経験など、ほかの類型も認められます)。
2つ目は、常勤役員等を直接補佐する体制で満たす方法です。一定の役員等経験(建設業に関する2年以上の経験を含む)がある常勤役員等に加えて、財務管理・労務管理・業務運営の業務経験をそれぞれ5年以上持つ直接補佐者を置き(1人が複数分野を兼ねることもできます)、組織として満たします。
直接補佐者の経験は、規則が定める業務に対応したもので、かつ申請事業者における建設業の経験に限られます(国土交通大臣の認定による方法もあります)。常勤役員等は申請事業者に常勤していることが前提で、経営経験や常勤性は商業登記簿謄本や社会保険関係の資料などで確認されます。経験が実際にあっても、必要な期間と地位を書類で証明できなければ、要件を満たしたとは認められません。該当パターンの判断や必要書類は複雑なため、詳しくは建設業許可の経営業務管理責任者とは?該当する人・しない人の記事で解説します。
要件2 営業所技術者等を専任で置ける
建設業法上の営業所ごとに必要です
営業所技術者等は、建設業法上の営業所ごとに置く技術者です(一般建設業は建設業法第7条第2号、特定建設業は同法第15条第2号)。一般の技術者を「営業所技術者」、特定の技術者を「特定営業所技術者」といい、従来は「専任技術者(専技)」と呼ばれました。ここでいう営業所は、倉庫や資材置場ではなく、本店・支店など常時建設工事の請負契約を締結する事務所です。営業所が2か所あれば原則それぞれに置きますが、同じ人が複数業種の基準を満たす場合は同一営業所内で兼ねられます。
一般建設業の主な資格・経験ルート
一般建設業の営業所技術者になれるのは、一定の国家資格、学歴と実務経験、技術検定合格後の実務経験などの要件を満たす人です。主なルートは次のとおりです(建設業法第7条第2号、建設業法施行規則第7条の3など)。
| ルート | 主な要件 |
|---|---|
| 国家資格等 | 施工管理技士、建築士、技術士、技能士など、申請業種に対応する一定の資格・免許等を有する |
| 指定学科+実務経験 | 大学または高等専門学校の指定学科を卒業後3年以上、高等学校または中等教育学校の指定学科を卒業後5年以上の実務経験を有する。専修学校についても、卒業区分に応じて3年以上または5年以上の実務経験で認められる場合がある |
| 技術検定+実務経験 | 一級の第一次検定または第二次検定に合格後3年以上、二級の第一次検定または第二次検定に合格後5年以上の実務経験を有する。ただし、指定建設業および電気通信工事業には適用されない |
| 実務経験 | 申請業種について10年以上の実務経験を有する。一定の業種については、複数業種の実務経験を組み合わせる特例が利用できる場合がある |
| 個別認定 | 海外での工事実務経験などについて、国土交通大臣の個別審査を受け、同等以上と認定される |
指定建設業(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の7業種)では、資格要件が異なります。資格、指定学科の卒業歴、技術検定の合格歴などがない場合は、原則として申請業種について10年以上の実務経験を証明する必要があります。実務経験には、建設工事と直接関係のない事務や雑務だけの期間は含まれません。どの資格がどの業種に対応するかは細かく定められているため、最新の有資格者コード表を確認してください。
専任・名義貸しの注意点
営業所技術者等は、その営業所に常勤して専らその職務に従事する必要があり(テレワークで営業所の職務を適切に行える場合を含みます)、他社の技術者や他の営業所の専任者を兼ねることは原則としてできません。社内に要件を満たす人がいないからといって外部の名義だけを借りる「名義貸し」は、常勤・専任の実態がなければ許可要件を満たさず、虚偽申請として許可取消しや罰則の対象になるおそれがあります。特定建設業では、一般建設業よりさらに厳しい資格要件(元請として一定額以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験など)が求められます。資格と業種の対応、実務経験の証明方法、特定建設業の要件など詳しくは、建設業許可の営業所技術者等(旧・専任技術者)とは?の記事で解説します。
要件3 請負契約に関する誠実性がある
建設業法第7条第3号は、法人、その役員等、政令で定める使用人などが、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことを求めています(同法第15条第1号により特定建設業にも適用)。ここでいう「役員等」には、取締役や執行役だけでなく、相談役、顧問、議決権5%以上の個人株主、出資総額5%以上を出資する個人、取締役と同等以上の支配力を有する者なども含まれます。
建設業許可事務ガイドラインでは、不正な行為を契約の締結・履行に際しての詐欺、脅迫、横領など法律違反の行為、不誠実な行為を工事内容、工期、損害の負担などについて契約に違反する行為、と整理しています。建築士法や宅地建物取引業法などの免許・登録について、不正・不誠実な行為を理由に免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない場合は、原則としてこの基準を満たさないものとして取り扱われます。建設業以外の事業で受けた処分であっても、建設業許可と無関係とは限りません。
要件4 財産的基礎または金銭的信用がある
一般建設業は3つのいずれかを満たします
一般建設業では、請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有しないことが明らかな者でないことが必要です(建設業法第7条第4号)。
- 自己資本の額が500万円以上ある
- 500万円以上の資金を調達する能力がある
- 許可申請直前の過去5年間、建設業許可を受けて継続して営業した実績がある
「自己資本が500万円なければ建設業許可を取れない」わけではありません。500万円以上の資金調達能力が認められれば要件を満たせる場合があります。取引金融機関が発行した500万円以上の預金残高証明書や融資可能証明書などが確認資料に挙げられ、発行時期の条件があるため早すぎる取得に注意が必要です。
自己資本の意味と判断時点に注意が必要です
法人の自己資本は、原則として貸借対照表の純資産合計額です(個人事業は所定の方法で計算)。既存法人は原則として申請時直前の決算期の財務諸表で、新設法人は設立時の資本金などで判断されます。決算が確定した後はその決算内容で判定されるため、許可申請を予定している場合は、決算前に純資産の見込みを確認しておくことが重要です。
特定建設業は4つすべての基準を満たします
特定建設業では、一般建設業より厳しい財産的基礎が求められます(建設業法第15条第3号)。申請時直近の貸借対照表において、原則として次のすべてを満たす必要があります。
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていない
- 流動比率が75%以上である
- 資本金の額が2,000万円以上である
- 自己資本の額が4,000万円以上である
いずれか1つを満たせばよいのではなく、原則として4つすべてを満たさなければなりません。
要件5 欠格要件に該当しない
該当すると許可を受けられません
建設業法第8条は、申請者や役員等が一定の欠格要件に該当する場合、許可をしてはならないと定めています。主なものは次のとおりです。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない
- 不正な手段で許可を取得したことなどを理由に許可を取り消され、所定の期間を経過していない
- 許可の取消処分を免れるために廃業届を提出し、所定の期間を経過していない
- 営業停止または営業禁止を命じられ、その期間が経過していない
- 拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わった日などから5年を経過していない
- 建設業法など一定の法令に違反し、または刑法上の一定の罪を犯して罰金刑に処せられ、その刑の執行を終わった日などから5年を経過していない
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない
- 暴力団員等が事業活動を支配している
- 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として、国土交通省令で定めるものに該当する
心身の状態に関する要件は、成年被後見人や被保佐人であることだけで一律に判断されるものではなく、医師の診断書などにより建設業を適正に営めると認められる場合には、該当しないことがあります。また、許可申請書や添付書類に重要な事項の虚偽の記載がある場合や、重要な事実の記載が欠けている場合も、許可を受けることはできません。
罰金刑でも欠格要件になる場合があります
見落としやすいのが罰金刑です。すべての罰金刑が欠格になるわけではありませんが、建設業法、建築基準法、労働基準法など一定の法令違反や、刑法上の一定の罪による罰金刑は、刑の執行を終わった日などから5年間、欠格要件に該当することがあります。「拘禁刑ではなく罰金刑だから問題ない」とは限りません。罪名、適用法令、判決内容、刑の執行を終えた日などを確認し、建設業法第8条に当てはめて判断する必要があります。
社長本人以外も確認対象になります
法人の場合、社長本人に欠格要件がなくても、他の役員等や政令で定める使用人が該当すれば、法人は許可を受けられません。確認対象は、取締役・執行役のほか、相談役、顧問、議決権5%以上の個人株主、取締役と同等以上の支配力を持つ者などの役員等と、建設業法施行令第3条の使用人(支配人や、支店・営業所で請負契約を締結する責任者)です。申請前には、社長だけでなくこれらを含めて確認する必要があります。
要件でつまずきやすいポイント
建設業許可の申請準備が途中で止まる主な原因は、次のとおりです。
- 経営経験や実務経験はあるが、当時の役職や、申請業種に対応する工事だったことを証明する契約書・注文書などの資料が残っていない
- 必要な実務経験期間の途中に、資料がない空白期間がある
- 営業所技術者等の候補者が、他社の常勤役員や他の営業所の専任者になっている、または持っている資格が申請業種に対応していない
- 決算後に自己資本が500万円を下回っていることが判明した
- 役員だけを確認し、5%以上の個人株主・顧問・支店長などの処分歴・刑罰歴や、社会保険の届出状況を確認していない
これらは申請直前に判明すると、解消が間に合わないことがあります。許可の取得を検討し始めた段階で、役員の経歴、技術者の資格、実務経験資料、決算書、社会保険の加入状況を点検しておくことが重要です。
まとめ
建設業許可を受けるには、経営業務の管理体制、営業所技術者等、誠実性、財産的基礎、欠格要件の5つを満たす必要があり、社会保険への適切な加入も経営体制の要件の一部として審査されます。特に問題になりやすいのは経営経験と実務経験を証明する書類で、経験が実際にあっても、地位・在籍期間・工事の業種などを資料で確認できなければ、要件を満たしたと認められないことがあります。財産的基礎は自己資本500万円以上だけが方法ではなく資金調達能力や営業実績でも満たせ、欠格要件は社長本人だけでなく役員・一定の株主・顧問・支店長なども対象です。思い込みで判断せず、業種・営業所・役員等の範囲・資格や経験の資料を整理したうえで、建設業法と申請先の最新の手引きを確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 前に勤めていた会社での経営経験も認められますか?
建設業に関する経営経験であれば、現在の会社での経験に限られません。ただし、当時の役職、在籍期間、その会社が建設業を営んでいた事実などを、商業登記簿謄本、過去の建設業許可関係書類、確定申告書、工事請負契約書などで証明できることが必要です。前職の会社から資料を取得できるかどうかが、実務上の分かれ目になります。
Q2. 1人で複数業種の営業所技術者になれますか?
同一営業所内であれば、1人が複数業種の資格要件を満たしている場合は、それぞれの業種の営業所技術者等を兼ねることができます。ただし、資格や実務経験がどの業種に対応するかを業種ごとに確認する必要があり、別の建設業者や別の営業所の営業所技術者等を兼ねることは原則としてできません。
Q3. 役員が罰金刑を受けていると許可は取れませんか?
すべての罰金刑が欠格要件になるわけではありません。ただし、建設業法など一定の法令違反や、建設業法第8条に定める一定の罪による罰金刑は、刑の執行を終わった日などから5年間、欠格要件に該当する場合があります。罪名だけでなく、適用された法令、判決の内容、刑の執行を終えた日などによって判断が変わるため、該当する可能性がある場合は、申請準備を進める前に個別の確認が必要です。
ご相談・お問い合わせ
建設業許可の要件を満たしているか確認する際は、役員等の経歴、技術者候補者の資格証、過去の工事資料、直前期の決算書、社会保険の加入状況を整理しておくとスムーズです。当事務所では、建設業許可の要件確認、申請書類の作成・提出、経営経験や実務経験を証明する資料の整理に対応しています。宮城県内・仙台市周辺で建設業許可の取得を検討している方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。
運営事務所:行政書士村上敦志事務所
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建設業許可の営業所技術者等(旧・専任技術者)とは?
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