
建設業許可を受けた建設業者は、営業所に標識を掲げる必要があります。また、発注者から直接請け負った工事の現場にも、標識を掲げなければなりません(建設業法第40条)。
さらに、元請・下請を問わず、営業所ごとに帳簿を備え、帳簿や法令で定められた営業に関する図書を保存する義務があります(同法第40条の3)。標識の未掲示や、帳簿を備えない・保存しないなどの場合は、10万円以下の過料の対象となります(同法第55条第3号・第5号)。
この記事では、標識を掲げる場所と記載事項、帳簿に記録する内容、書類の保存期間(5年・10年)などを、建設業法と建設業法施行規則(以下「規則」)に基づいて解説します。
まず全体像:誰に何が義務付けられるか
建設業許可を受けた業者には、元請・下請を問わず守るべき義務があります。一方、工事現場の標識掲示や保存する図書の範囲は、元請・下請の立場によって異なります。
| 義務 | 元請として工事を請け負う場合 | 下請として工事を請け負う場合 |
|---|---|---|
| 営業所の標識 | 必要 | 必要 |
| 工事現場の標識 | 必要(発注者から直接請け負った工事の現場) | 第40条による掲示義務なし |
| 帳簿の備付け・保存 | 必要 | 必要 |
| 営業に関する図書の保存 | 必要(対象となる図書を保存) | 必要(対象となる図書を保存) |
標識は営業所と元請工事の現場に掲げる
営業所の標識はすべての許可業者に必要
建設業法第40条は、建設業者に対し、「その店舗」ごとに、公衆の見やすい場所へ標識を掲げることを義務付けています。本記事では、分かりやすくするため、以下「営業所」と表記します。
元請・下請の別や、現在工事を施工しているかどうかにかかわらず、建設業許可を受けた業者は、建設業法上の営業所に標識を掲げる必要があります。
工事現場の標識は元請工事の現場に限られる
工事現場の標識について、建設業法第40条は対象を「建設工事(発注者から直接請け負ったものに限る。)の現場」と定めています。したがって、工事現場に標識を掲げる義務があるのは、発注者から直接その工事を請け負った元請業者です。
下請として請け負った工事の現場には、同条による現場標識の掲示義務はありません。ただし、下請業者であっても、営業所の標識掲示や帳簿の備付け・保存義務はあります。
営業所に当たるかどうかは実態で判断される
建設業法上の「営業所」とは、本店・支店、または常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいいます(建設業法第3条第1項、建設業法施行令第1条)。名称だけで決まるものではなく、見積り・入札・契約締結などの実態や、建設業の営業に実質的に関与しているかによって判断されます。自宅を営業所とする場合の考え方は宮城県で自宅兼事務所の建設業許可は取れる?で解説しています。
営業所に該当する事務所は、許可申請や変更届に正しく反映する必要があります。営業所の名称・所在地の変更や新設・廃止があったときは、30日以内に変更届出書を提出します(建設業法第11条第1項)。ただし、知事許可業者が他の都道府県に営業所を設ける場合など、許可を受ける行政庁が変わるときは、変更届だけでは足りず、新たに許可を受ける必要があります(許可換え。同法第9条第1項)。そのうえで、届け出た営業所ごとに標識を掲げます。変更届の対象や期限は宮城県で建設業許可の変更届が必要なケース・不要なケースで詳しく解説しています。
標識の記載事項・様式・寸法
標識の記載事項は規則第25条第1項に定められています。様式は、営業所用が別記様式第28号、工事現場用が別記様式第29号です(同条第2項)。
営業所用の標識(別記様式第28号)
- 一般建設業または特定建設業の別
- 許可年月日、許可番号、許可を受けた建設業
- 商号または名称
- 代表者の氏名
様式には「この店舗で営業している建設業」の欄もあります。寸法は縦35cm以上×横40cm以上です(別記様式第28号)。
工事現場用の標識(別記様式第29号)
営業所用の4項目に加えて、主任技術者または監理技術者の氏名を記載します(規則第25条第1項第5号)。様式の記載要領に従い、「専任の有無」「資格名」「資格者証交付番号」も該当する場合に記載します。
寸法は縦25cm以上×横35cm以上です(別記様式第29号)。工事の途中で技術者が交代した場合は、標識の記載も差し替えます。
標識を作成するときの確認点
標識を作成するときは、別記様式第28号・第29号に従い、許可番号・許可年月日・許可業種などを許可内容と照合します。許可内容に変更があった場合は、標識の記載も確認しましょう。
帳簿は営業所ごとに備え、工事ごとに記載する
建設業法第40条の3は、建設業者に対し、営業所ごとに帳簿を備え、帳簿と「営業に関する図書」を保存することを義務付けています。会計帳簿や税務上の帳簿とは別の、建設業法上の帳簿です。元請・下請の区別はなく、下請工事しか行わない業者にも適用されます。
すべての工事で記載する事項
規則第26条第1項第1号・第2号により、次の事項を記載します。
- 営業所の代表者の氏名と、その者が代表者となった年月日
- 請け負った工事の名称、工事現場の所在地
- 注文者と請負契約を締結した年月日
- 注文者の商号・名称または氏名、住所(注文者が建設業者であれば、その許可番号)
- 完成を確認するための検査が完了した年月日
- 目的物の引渡しをした年月日
下請契約を締結した場合に追加する事項
自社が工事を下請に出した場合は、規則第26条第1項第4号により、次の事項を追加します。
- 下請に出した工事の名称、工事現場の所在地
- 下請契約の締結年月日
- 下請負人の商号または名称、住所(建設業者であれば、その許可番号)
- 完成検査が完了した年月日、目的物の引渡しを受けた年月日
住宅新築・特定建設業者の場合に追加する事項
発注者(宅地建物取引業者を除く)と住宅を新築する工事を契約した場合は、住宅の床面積のほか、該当する場合には建設瑕疵負担割合や住宅瑕疵担保責任保険法人の名称を記載します(規則第26条第1項第3号)。
特定建設業者が建設業法第24条の6第1項の対象となる下請契約を締結した場合は、下請代金の支払額・支払年月日・支払手段なども記載します(規則第26条第1項第4号ニ)。一般建設業と特定建設業の違いは一般建設業許可と特定建設業許可の違いとは?をご覧ください。
帳簿に添付する書類
帳簿には、次の書類を添付します(規則第26条第2項)。
- 請負契約の書面(建設業法第19条の契約書面)またはその写し
- 特定建設業者が上記の支払状況を記載する下請契約の場合は、下請代金の支払額・支払年月日・支払手段を証する書面またはその写し
- 施工体制台帳を作成しなければならない工事の場合は、施工体制台帳の所定部分
記載するタイミング
記載と添付は、工事ごとに、その事実が生じた(または明らかになった)ときに遅滞なく行います。記載事項に変更があったときは、変更年月日を付記して変更後の内容を記載します(規則第27条)。決算期や更新申請の前にまとめて作るものではありません。
帳簿とは別に保存する「営業に関する図書」
建設業法第40条の3は、帳簿とは別に「営業に関する図書」の保存も求めています。対象となる図書は規則第26条第5項で定められており、事業者の立場によって範囲が異なります。
| 図書 | 作成建設業者 | その他の元請(作成建設業者を除く) | 下請 |
|---|---|---|---|
| ① 完成図(施工上必要に応じて作成または発注者から受領したもの) | ○ | ○ | - |
| ② 工事内容に関する発注者との打合せ記録(施工上必要に応じて作成し、当事者が相互に交付したもの) | ○ | ○ | - |
| ③ 施工体系図 | ○ | - | - |
| ④ 材料費等記載見積書(作成したとき) | ○ | ○ | ○ |
| ⑤ 契約締結前に必要に応じて作成した④の見積書の内容に関する注文者との打合せ記録(当事者が相互に交付したもの) | ○ | ○ | ○ |
「作成建設業者」とは、法令により施工体制台帳を作成する元請業者をいいます(規則第14条の2第1項第1号)。
「材料費等記載見積書」は、材料費・労務費等の経費の内訳や、工程ごとの作業・準備に必要な日数を記載した見積書です(建設業法第20条第1項)。④と⑤は下請業者も保存対象となります。
保存期間と起算点
帳簿と添付書類:原則5年、住宅新築の一部は10年
帳簿と添付書類の保存期間は、工事ごとに、目的物の引渡しから原則5年間です。ただし、請負契約に基づく債権債務が消滅した場合は、その消滅時から数えます(規則第28条第1項)。
発注者と締結した住宅を新築する工事については10年間です。ただし、ここでいう発注者からは宅地建物取引業者が除かれるため、注文者が宅地建物取引業者の場合や下請工事は、この10年保存の対象とはならず、原則5年です。
営業に関する図書:引渡しから10年
営業に関する図書の保存期間は、工事ごとに目的物の引渡しから10年間です(規則第28条第2項)。住宅かどうかは問いません。帳簿とは保存期間が異なるため、廃棄時期を分けて管理しましょう。
帳簿や書類は電子データで保存できる
建設業法施行規則第26条では、一定の要件を満たせば、帳簿や書類を電子データで管理できます。
- 帳簿の記載事項:電子ファイルや電磁的記録媒体に記録する(第6項)
- 帳簿の添付書類:スキャナ等で読み取って電子データとして保存する(第7項)
- 営業に関する図書:電子ファイルや電磁的記録媒体に記録する(第8項)
いずれも、必要に応じてその営業所で、パソコン等を使って紙面または画面に明確に表示できることが必要です。
電子データの場合も、前述した帳簿・添付書類および営業に関する図書の保存期間が適用されます(規則第28条)。
義務に違反した場合
次の行為は、10万円以下の過料の対象となります(建設業法第55条)。
- 第40条の標識を掲げないこと(第3号)
- 第40条の3に違反して、帳簿を備えない、記載しない、虚偽の記載をする、または帳簿・図書を保存しないこと(第5号)
また、建設業法違反として、監督行政庁による指示処分の対象となることがあります。指示に従わない場合などは、営業停止処分の対象となることもあります(同法第28条)。
定期的に確認したいポイント
標識や帳簿は、次の点を定期的に確認しておきましょう。
- すべての営業所に、最新の許可内容を記載した標識を掲げているか
- 元請工事の現場標識が、現在の技術者の配置状況を反映しているか
- 工事ごとに帳簿を遅滞なく記載し、必要な契約書面等を添付しているか
- 帳簿・添付書類(原則5年・一部10年)と営業に関する図書(10年)の保存期限を管理しているか
- 電子保存の場合、営業所で紙面または画面に明確に表示できるか
よくある質問(FAQ)
Q1. 工事現場の標識は下請でも必要ですか?
下請として請け負った工事の現場には、建設業法第40条による現場標識の掲示義務はありません。第40条は、現場標識の対象を「発注者から直接請け負つたもの」の現場に限っています。元請として請け負った現場では必要です。
Q2. 下請工事しかしていなくても帳簿は必要ですか?
必要です。建設業法第40条の3による帳簿の備付け・保存義務は、元請・下請を問いません。下請工事についても、営業所ごとに帳簿を備え、工事ごとに必要事項を記載します。
Q3. 帳簿はExcelで作成できますか?
作成できます。建設業法施行規則第26条第6項の要件を満たし、必要に応じて営業所で紙面または画面に明確に表示できる状態であれば、電子データで管理できます。
Q4. 帳簿の保存期間はいつから数えますか?
原則として、工事ごとに目的物の引渡しから数えます。ただし、請負契約に基づく債権債務が消滅した場合は、その消滅時からです。保存期間は原則5年間で、一定の住宅新築工事は10年間です(規則第28条第1項)。
Q5. 少額の工事も帳簿に記載する必要がありますか?
必要です。帳簿について、工事金額による除外規定はありません。少額の建設工事であっても、工事ごとに必要事項を記載します(規則第27条)。
Q6. 契約書を保存していれば帳簿は作らなくてもよいですか?
いいえ。建設業法上の帳簿と請負契約書面は別のものです。営業所ごとに帳簿を備え、工事ごとに必要事項を記載したうえで、規則第26条第2項に定める契約書面などを添付して保存します。
まとめ
- 営業所の標識は許可業者に、工事現場の標識は発注者から直接請け負った元請工事の現場に必要
- 帳簿は元請・下請を問わず営業所ごとに備え、工事ごとに遅滞なく必要事項を記載する
- 帳簿と添付書類は原則5年、一定の住宅新築工事は10年保存する
- 営業に関する図書は、目的物の引渡しから10年保存する
- 標識の未掲示や帳簿を備えない・保存しないなどは、10万円以下の過料の対象となる
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運営事務所:行政書士村上敦志事務所
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宮城県の建設業許可の更新手続きとは?受付期間と申請期限
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